ZENDORA BOOKS BLOG

とってもとってもニッチな会社!クリーニングの業界出版社・ゼンドラ株式会社より発行しております、書籍紹介のブログです。クリーニング店の皆様だけでなく、どなたでもお読みいただける内容をまとめておりますので、ぜひとも気軽に読んで楽しんでくださいね。

価格の決め方って原価積み上げ方式の他に、もう一つあったのをご存じですか?

頭の中が混乱したのか、考え込んでしまった中山社長。
さて、このあと話はどうなったのでしょうか?

今日は価格を決めるの後篇です。


f:id:makotomarron:20141109111225j:plain

 

★価格を決める(前篇からのつづき)

 

この品質は難しい。まず他の外交がどのような品質を提供しているかが分からない。それを知った上でこちらはそれ以上の品質を提供しなければならない。それも今まで品質とは技術だと思っていた。でも品質は、 それだけではないと言う。

 

「難しいですね」
中山社長は、おもわず言ってしまった。横にこれから外交を始めようと意気込んでいる幸二がいるにもかかわらず。

 

幸二の顔色が変わったのを感じて、藤川が助け舟を出した。

 

「いや、それほど難しいことではありません。お客様が要求する品質を、理解してさえいればいいのです」

 

「簡単なのですか?」

 

「いいえ。簡単とは言っていません。難しくはないと言ったのです。それにはもうちょっと外交を理解する必要があります」

 

幸二は気を取り直して、藤川の話に耳をかたむけた。
「ところで、価格にはもうひとつ知ってもらわないといけないことがあるのです」

 

「よくお客様によって価格を変えると耳にするのですが、これは後々問題がでてくるので、おこなってはいけないことです」

 

「お客様によって、価格を変えるのですか?」

 

「そうです」

 

「普通に考えても、それはだめでしょう。でも、どうして後々問題が出てくるのですか?」

 

「外交を利用しているお客様は、それほど多くはないのです。これは価格の問題が大きく影響しているからだと思います。その多くないお客様同士が、それも遠く離れたお客様同士が実は友達だったということも珍しくないのです。友達どころか、お客様同士が結婚したこともありました。さすがにこの時は私もびっくりしましたが。もしこの二人の価格が違っていたらどうなるでしょう?」

 

「これはもう、信用が無くなりますね」

 

「その通りです。信用問題になるのです」

 

「はっきりとした基準でもあれば別でしょうが、そんな基準はあるのですか?」

 

「例えば、スタンダード、デラックスなどの区分があって、あくまでもお客様がそれを選ぶ場合はいいのですが、こちらが勝手にお客様毎に判断して価格を操作するのですから、明確な基準などあるはずがありません」

 

この問題は、古くから外交をおこなっているクリーニング店によく見られる傾向である。

 

個々のお客様に提供する品質が同一であるならば、価格も同一でなければならない。そこにごまかしや偽りはあってはならない。信用こそが長く続ける秘訣であることを忘れてはいけない。そして、区分出しなどによる価格の選択権は、あくまでもお客様になければならない。

 

「価格の持つ意味が分かったところで、いよいよ価格を決めるのですが、その決め方が二通りあるのを知っていますか?」

 

価格を決める方法?中山社長と幸二は顔を見合わせた。もちろん二人は原価積み上げ式を知ってはいたし、現にその方法に近い形で今の店の価格を決めていた。

 

「二通りですか?」
幸二は聞き返した。

 

「そうです。もちろん、原価積み上げ式でアイテム毎に価格を決めていく方法は、ご存知と思います」

 

「はい」

 

「実はもう一つあるのです」

 

藤川は続けた。
「その方法とは、最初に一点単価を決めてからそれにそってアイテム毎の価格を決めていくのです」

 

「一点単価を決めてから、各アイテムの価格を決める?」

 

幸二は、またもや分からないといった顔をしていた。
「幸二君、普通、一点単価を求める場合はどうしますか?」

 

「もちろん、売上を総点数で割って求めます。でも、まだ売上も出ていませんし、もちろん点数も分かりませんよ」

 

「そうです。でも今回はちょっと違った方法で求めてみましょう」
そう言いながら藤川は立ち上がり、机に向かって歩き出した。そして机に置いてある

 

愛用のコンピューターを操作して、ファイルを表示した。
「ちょっとこれを見て頂けませんか」

そう言って藤川は、画面に表示されているファイルを見るように促した。

 

そこには「商品別売上」の名前が付いたファイルが表示されていた。
藤川は、またキーを叩き出した。

 

すると画面が切り替わり、上部に表が再表示され下部にはグラフが現れた。
「これは、当社における商品別売上のABC分析の結果です」

 

「ABC分析?」

 

「幸二君、商品別売上は分かりますね」

 

「はい。売上の中でどの商品がどれだけの金額になっているかを見るものですね。でもABC分析とは?何でしょうか」

 

商品別売上は分かる。でも、「ABC分析」は二人にとって初めて聞く言葉だった。

 

そこで藤川はABC分析とは何か、さらにその算出手順などについて書かれた1枚のファイルを二人に見せて説明した

 

 

(明日もおたのしみに)

 


ルート外交マニュアル〈最終完結版〉 2005/12/01 (2005年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読


瀧藤圭一著
ルート外交マニュアルほか書籍一式