ZENDORA BOOKS BLOG

とってもとってもニッチな会社!クリーニングの業界出版社・ゼンドラ株式会社より発行しております、書籍紹介のブログです。クリーニング店の皆様だけでなく、どなたでもお読みいただける内容をまとめておりますので、ぜひとも気軽に読んで楽しんでくださいね。

外交営業の価格決定は難しい!ここがわかると一歩も二歩も成長します

瀧藤圭一氏「ルート外交マニュアル」です。
この書は物語形式となっておりますが
物語でない解説書「目からウロコの外交営業」も同時発売中です。

今日は少々宣伝から^^


目からウロコの外交営業マニュアル 基本編 (2014年07月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読

 


【最新】目からウロコの外交営業マニュアル 実践編 (2014年08月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読

 

それでは、価格を決める(前篇)をどうぞ!

 

 f:id:makotomarron:20141109063039j:plain

★価格を決める

 

 「では、価格はどうしますか?」

 藤川は中山社長に尋ねた。

 

 「はい。おもいきって店と同じにしようかと思っています」

 中山社長は、自分が思っていた以上の急激な売上の落ち込みで、早急に対策を講じなければ店そのものの存続さえ危ない状況に、焦りを感じていた。そこで、価格を安く設定することによって初心者である幸二の外交がやりやすく、又早く軌道にのせることができるのではないかと思っていた。

 

 「う~ん」
 と唸ったまま、藤川は考え込んだ。

 

 それを聞いた藤川には、中山社長の置かれている状況が良く分かっていた。たしかに言わんとすることは

 

良く理解できる。しかしそれならば、価格より外交をおこなう時間を工夫した方が話は早い。でもこの方法はいずれ行き詰まってしまう。店を助け且つ、せっかく外交に意欲を見せている幸二をなんとかしたい。藤川は、暫く考えてから答えた。

 

 「おそらく中山社長は取次店の手数料を参考にしているのではありませんか」

 

 「そうです。普通、取次店は売上にもよりますが、3割の手数料を貰います。ということは、受ける店は7割の収入でまかない、それでも利益が出ていることになります。この3割の取次店手数料で外交の経費が賄えるのではありませんか」

 

 中山社長は、外交をおこなう経費をこの3割に収めることができれば、 価格を店と同じにできるのではないかと考えていた。

 

 もともとは取次店展開を考えていたので、取次店の仕組みをそれなりに勉強もしていた。しかし、状況があまりにも早く悪化したために、時間が無くなっていた。かといって直営の営業所では初期投資がかかりすぎる。そこで、初期投資が少なく短期間でそれなりの売上が見込める効率の良い外交を立ち上げることを考えたのだった。

 

 「それは無理です。よく考えてみて下さい。例えば、委託の取次店はまず家賃がいりません。しかし外交は、家賃にあたる車の経費がかかります。それにもまして、外交と取次店とでは効率がはるかに違います。

 

私が先ほど言ったことを思い出して下さい。そもそも取次店は、外交の効率の悪さを補う為に考え出された営業形態です」

 

 中山社長は、外交が実は効率の悪い営業形態であることを忘れていた。

 藤川は続けた。

 

 「たとえ価格を安くしても、新規のお客様を獲得できる確率はそれほど変わらないのです。極端に安くするのであれば別ですが、かといってそれでは利益が少なくなりすぎます」


 「価格を安くしてもお客様は取れない?」

 

 中山社長は、意味が理解できなかった。

 

 「いいですか。価格を決める前に知っていなければならないことが、三つあります」
 藤川は、価格の持つ意味を理解する事無く、価格を決めてはいけないことを説明しだした。

 

 「まず、価格とは品質そのものだということです。ただこの品質はしみ抜きやプレス技術だけではありません」

 

 「え!技術ではないのですか?」
 幸二は驚きの声を上げた。

 

 「いえ、技術は必要です。もちろん高い技術にこしたことはありませんが、お客様が考える品質とは、技術力はもちろん、外交をおこなう人の接客や応対、クリーニング知識、衣服の知識、そして忘れてはいけないことに、お客様からの問合せを受ける店の応対までもすべて含めたものが、品質と考えています」

 

 「そんなに品質の範囲が広いのですか?」

 

 幸二は今まで、品質とは、提供する技術のことだと思っていたので、しみ抜きの講習があれば進んで学びに出かけていた。それだけに藤川の言葉に戸惑った。

 

 「クリーニング屋さんは、とかくこの事を理解していない場合が多いのです。これは外交に限ったことではありません。確かな技術さえあれば、お客様は来てくれる。これでは売上が下がって当たり前なのです」

 

 幸二には、中山クリーニング店が提供する技術には自信があった。その上で藤川の指導さえあれば、外交はそれほど難しくないものと思っていた。

 

 「価格とは、クリーニング店が提供するこれらの品質が、お客様が考える基準に見合う価値を表したものでなければなりません。ですから、価格の高い、安いは、実際の金額ではなく、お客様が考えるこの品質に対して高いのか、安いのかなのです」

 

 幸二はまだ理解できていない。
 「価格とは、お客様に支持される品質を表したものと考えるといいでしょう」
 そう続けた藤川に、ようやく幸二が言った。

 

 「では、価格の決定権はお客様にあるというのですか?」
 「というより、支持されるかどうかで価格は決まってしまうと言うことです」
 「それで、先ほど価格を安くしてもお客様は取れないと言っていたのですか?」
 中山社長が口を挟んだ。

 

 「ええ。でも、それだけではありません。外交の価格は、普通店受けよりも高く設定されています。これは先ほどから言っている外交の非効率性のためと考えられるのですが、そのために外交を利用する人はある程度限定されます。でも、その人達が未だに外交を利用していないとは考えにくいのです。もう既に外交を利用していると考えた方が自然です。であれば、新規のお客様を獲得することとは、他の外交を利用しているお客様をこちらに変わってもらうこと、奪うことになります。これは、比べる品質が他の外交を利用しているために、既に存在していることになります。だから、既に利用しているその品質と同じか、それ以上の品質を提供した上で他の外交よりも安くなければ、お客様は安いとは思わないのです。価格だけ安くしても新規のお客様は、基本的には取れないということになります」

 

 中山社長は考え込んでしまった。

 

 

(明日もおたのしみに)

 


ルート外交マニュアル〈最終完結版〉 2005/12/01 (2005年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読


瀧藤圭一著
ルート外交マニュアルほか書籍一式