外交営業における商圏の設定、そして初めて見る資料…
本日より第5章 ルート外交マニュアルをお届けします。
いきなり商圏の設定という大事な場面です。
気負うことなく気軽にお読みいただけると嬉しいのですが、藤川さんのビンビンのパワー、凄いですよね。
(気軽に、でもパワーを感じてお楽しみください)
第5章 商圏の設定
「外交を始めるために必要な設計図のことは、分かって頂けたと思います。では商圏をどうするか、お考えですか?」
藤川は、いよいよ具体的な内容に入っていった。
「やはり店を補う形でと考えていますので、店を中心とした商圏でいきたいと思います」
中山社長が答えた。
しかし、幸二は、ここまでの藤川の話を聞いて、自分の外交は店とは別の商圏で独自に作り上げたいと思っていた。
ちょっと不満そうな幸二の顔を見て、藤川が幸二に尋ねた。
「幸二君はどう思っていますか?」
幸二は、ちらっと父親の顔を見て答えた。
「僕は、店とはまったく違った商圏で、外交をやってみたいです」
そう言って又、父親の顔を見た。
中山社長にしてみれば、初めての外交をできれば失敗をさせたくはなかった。それには、できるだけ店の存在をアピールできる店を中心とした商圏で外交を展開させたかった。その上、店に対しても相乗効果が期待できる。ちょっと不満そうに藤川に言った。
「店とまったく関係無い所で外交をおこなうと、お客様は店を知ることができないので、難しくなるのではありませんか?」
「いえ。外交の商圏は、店に拘束されることがありません。別にお客様が店を知らなくてもいいのです。何故かというと、外交とはそれをおこなう人自身が店になるのですから」
「移動する店と考えればいいのでしたね」
幸二は最初に藤川に言われたことを思い出して答えた。
「その通りです」
二人の言葉を聞いて、中山社長は藤川のいう御用聞きとの違いを思い出していた。
「将来には別組織を目指すつもりなのか?」
中山社長が幸二に言った。
「できれば、そうしたいと思っているんです」
幸二は力強く答えた。
「なるほど。それはそれでいいのですが、組織立てるとなると又別の問題が出てくるのですが、それは後でお話するとして、今は商圏を決めましょうか」
幸二は、別の問題があると藤川に言われて、ちょっと不安になったが、 今は商圏を決めるのが先決だと思った。
「さて、店とは別の商圏で外交をおこなうといわれましたが、やみくもに商圏を決めるわけにはいきませんよ」
「それは分かります。でも、どのようにして決めればいいのでしょうか?」
「まず、その質を把握しなければなりません」
「質ですか?」
「ええ。その地域にどのような人が住んでいるかを知る必要があります」
そう言って藤川は、本棚へと歩いていった。
そこから、白い表紙の小冊子と、ちょっと部厚い本を取り出して二人の前に差し出した。
白い表紙の小冊子には、「町丁目別人口調査」の題が、部厚い本には、「民力」と書かれていた。
「商圏の質を知るには、国勢調査や商業統計などのデータを活用しなければなりません。クリーニング業はどちらかというと地域密着型ですから、細かいデータが必要になります。この「町丁目別人口調査」は、国勢調査を元に一番細かい○○町○○丁目単位の人口の詳細が載っています」
二人は差し出されたこの小冊子に見入っていた。
「とっても詳しい数字が並んでいますね」
「ええ。でもこれは別に外交に限ったことではなく、どちらかというと店での活用が多いのですが」
「これは、何処で売っているのですか」
中山社長は感心して言った。このような資料は、初めて見るものだった。
(明日もお楽しみに)
ルート外交マニュアル〈最終完結版〉 2005/12/01 (2005年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読