60歳を中心とした求人募集がヒット!人間らしく働くとは?
深刻な人手不足の時代に入りました。
この流れはしばらく続くどころか、日に日に悪化し、半世紀は続いていくものと言われております。人手不足は企業の成長を鈍らせる、これが人口動態変化の影響そのものです。
反面、人はいくつになっても人とのつながりを欲します。かけがえのない暖かな心は、企業やお店そして人を成長させます。だからこそ、人手不足の時代にも素直な心でとらえると、ネガティブな要素はポジティブに考えられます。
今日はそんなお話です。
〈3〉 老働力の時代
働きやすい職場
労働環境の整備を語る機会が増えました。なにより働きやすい職場づくりを最優先課題にしています。
働きやすい職場
感動する売場
きちんと利益のでる会社
各社に提示した下期から実現を目指すスローガンです。
働きやすい職場が最優先である圧倒的で決定的な理由は、私たちのクリーニングという業種が、とくに都市部では働いてくれる人のいない業種になっているからです。深刻な人手不足の事実です。必要十分な店舗スタッフを確保できている会社がどれだけあるでしょうか。サービスバイザーの役割りもいつのまにか、人員シフトの穴埋めになっているのが現実であり現況です。
工場部門ではさらに深刻度を増します。入国管理局の強制捜査の重点対象に、クリーニング業の集中工場があげられているそうです。不法滞在者の就労場所と見なされているわけです。不法滞在者の雇用は論外としても、外国人研修生なくしては操業できない工場が増え続けているのも現実です。店であれ工場であれ、拡大の前提としてばかりでなく、現状の維持のためでさえ人手不足が大きな問題です。原材料費とともに求人費、人手を確保するための経費が大幅に増加しています。
老働力の発見
東京の五反田に本社工場をおくN社様。昨年12月に集中工場を新規に稼動させ、直営店を8店舗、一年弱の短期間で連続出店させました。新工場の開設、直営店の連続オープンで最も大きな問題は、やはり人手の確保でした。
工場部門は既存工場からの移動と正規研修生で目途をつけました。困難を極めたのは店舗スタッフの確保です。様々な媒体を使い、同一エリアで複数回募集をしても、応募者がゼロということがたびたびだったそうです。
オープン予定日が決まり、研修スケジュールが確定しても、面接すらできない日々。
担当のA部長は胃の痛くなる毎日でした。悩んだすえの対策が
『50代 60代の健康な女性の職場です。人生の経験を活かしてみませんか。勤務日数・勤務時間は無理のないように相談しましょう。40代なら大歓迎!あなたといつまでもNクリーニングが当店で働く方を待っています』
労働力ならぬ老働力の発見でした。募集対象を60代中心にしたのです。必要人員は不都合なく確保され続けました。A部長のクリーンヒットです。
気づかされました。教えられました。そして学びを得ました。60代の女性を「老働力」などと呼ぶことの傲慢さと愚かさを。彼女たちは現役です。なにより穏(おだ)やかな雰囲気の聞き上手な人が多いことに感動させられました。人を年齢という先入観で決めつけてはいけません。人はいつだって誰かとつながっていたいんです。人はいくつになっても誰かの役に立ちたいんです。
長持ちする経営
休むことを犠牲にし、年中無休で長時間の営業をすることが、人間らしい営みでしょうか。
人手不足にあえいでいる現実がありながら、従業員に負荷をかけ、スーパーや商業施設に命ぜられるまま深夜11時まで営業することが、業としてのあるべき姿なのでしょうか。
短距離レースの成長期はとうに過去の彼方へ過ぎ去っています。なにかを犠牲にする、誰かを犠牲にする経営は長持ちしません。
機械や店、ましてや人や組織も、すべてが長持ちする経営に転換すべき潮目です。人が辞めない職場にしましょう。
なによりの願いです。人間らしくありたいと。
(<3> 老働力の時代 終)
年配者の方々のこれまで培ってきた経験は、得ようとしてもすぐに得られるものではない「かけがえのない」もの。このかけがえなさが、まさに人間そのものだと感じます。
だからこそ、
人間らしい営み、人間らしい仕事
いつまでも心の中に残しておきたい言葉です。
(明日もお楽しみに)
出典:小笠原範光 著・売れるクリーニング(ゼンドラ出版)
売れるクリーニング 小笠原範光の新・マーケティング論 2007/12/1 (2007年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読