ダンゴ生産をやめるだけで、25%も生産性が向上するウソのような話
今日はまずこの引用記事を読んでください。ダンゴ生産のムダ取りと、ものづくりの概念が変わりますよ。このページ、検索の入り口ページとしていつもアクセス上位を保っております。
さて今日は、日本一わかりやすいトヨタ生産方式について、解説したいとおもいます。
クリーニングの現場ではもうお馴染みのトヨタ生産方式ですが、「本を読んでも、いまいちよく分からないんだよな」という声を多く耳にします。
“平準化”だの“多工程持ち”だの“かんばん”だの、難しい言葉がたくさん出てきますよね。でも、「考え方を勉強したら、とてもためになった」とか「生産性が上がった」とか「春の残業が無くなった」という声も多く聞かれます。
そこで今日は一般的な「分業生産」とトヨタ生産方式における「多工程持ち」を比べて、いか多工程持ちが素晴らしいか、「人形の生産」で表現してみたいと思います。
ごめんなさい、難しい言葉と言い回しが出てきましたが、ここで諦めないでください。この後は簡単な説明ですよ。
(1)まずは「頭」「胴」「手」「足」の4つのパーツがあります。
作業の順番は
(イ)頭と胴のとりつけ
(ロ)「頭と胴」に手のとりつけ
(ハ)「頭と胴と手」に足のとりつけ で完成。
かかる作業の所要時間は
(A)頭+胴に3分
(B)「頭と胴」+手に4分
(C)「頭と胴と手」+足に5分 かかるものと定義します。
定義は説明しましたので、一般的な分業での生産を説明します。
3人がそれぞれの部所を専門で行います。
パートさん・Aは、頭と胴をとりつける作業だけおこない、それを1時間で20個つくります。
パートさん・Bは、「頭と胴」に手をとりつける作業だけおこない、それを1時間で15個つくります。
店主・わたしは、「頭と胴と手」に足をとりつける作業だけおこない、完成品を1時間に12個つくります。
したがって、3人で、完成品は1時間に12個できます。
つぎに、ひとりひとりがすべての作業をおこなう、多工程持ちでの生産を説明します。
パートさん・Aは、頭と胴をとりつけ(3分)、その後に手をつけて(4分)、その後に足をつけます(5分)。1個完成するのに12分かかりますので、Aさんは1時間で5個完成品を作ります。
パートさん・Bは、頭と胴をとりつけ(3分)、その後に手をつけて(4分)、その後に足をつけます(5分)。1個完成するのに12分かかりますので、Bさんは1時間で5個完成品を作ります。
店主・わたしは、頭と胴をとりつけ(3分)、その後に手をつけて(4分)、その後に足をつけます(5分)。1個完成するのに12分かかりますので、わたしは1時間で5個完成品を作ります。
1人が1時間に5個ずつ完成品を作るので、3人で、完成品は1時間に15個できます。
神隠しみたいな話ですが、これが事実なんですよ。ワイシャツの生産で当てはめると、本当に作業性が改善されます。
分業での作業ですと、
パートさん・Aのところで、1時間に8個ずつ、頭と胴がつけられた未完成品が余っていきます。
パートさん・Bのところで、1時間に3個ずつ、頭と胴と手がつけられた未完成品が余っていきます。
この余ったものを「仕掛り(しかかり)」と言い、 ムダの極み とされます。
ちなみに、「多工程持ち」と「多能工」がよく混同しますが、「多工程持ち」できる作業者のことを、「多能工」といいます。
先日、日本ドライクリーニング協会のセミナーで、講師であった元・白洋舎支店長の安松勝氏が、「溜めて(貯めて)いいのはゼニだけですぞ」と申しておりました(笑)
ワイシャツの4つ玉に、作業途中の商品がかかっていませんか?事務職なら、やりかけの仕事、残っていませんか?これらはすべてムダですぞ、お金を垂れ流していることと同じなのです。
( 下手なイラストでごめんなさい m(_ _)m )
多能工と多工程持ちの違いもわかりましたね。作業者が同じ3人にも関わらず生産性は25%もアップする不思議な話です。
さあ、なぜそうなるのか。
大野耐一氏の言葉で、とてもわかりやすく語られています。
ご覧ください。
第6話 物を溜めること、運ぶこと、こりゃあもう一番つまらん。ムダがムダを呼ぶだけです。
最近「軽薄短小」ということがいわれておりますが、そういった意妹でも、経営も「軽薄短小」でなきゃいかんと思います。
まあ、さっきの「大きいことはいいことだ」というのと同じになりますが、この世の中にはあいかわらず「大艦巨砲主義」というのがあって、ようするになんでもまとめていっぺんに作りゃ安くできるんだぞと、いうようなことで何でも機械を大きくしようとする。
あるいは高速化したり、それ一台で何でもできるようにしようとする。こういう考え方というのは、大量生産の考え方なんですが、こういうことをやっとっちゃいかんのでね。
私らではこれを「ダンゴ生産」なんて呼んどるんですが、「ダンゴ」で物作っちゃいかんぞといっとるんです。
「ダンゴ生産」するとどういうまずい点が現れるかというと、まずひとつにはムダなスペースが必実となるんです。
たとえば大艦巨砲主義で、一度にまとめてたくさん作れる大型機械を入れますね。そうすると、それだけでも機械設置するのに広い場所がいる。さらに、一度にたくさんの物ができてくるということは、できた品物を置いておく場所が広く必要になる。
もちろん投入する材料も、大きな機械だからたくさん用意しておかねばならないので、その材料を置いておく場所がいる。この材料の場合は、スペースの問題だけでなく在庫の問題もでてきます。
で、このような機械を使うというと、たいていはその機械の世話をする人間をべったりとつけておかにゃならん。
これが座り作業だったらもっとひどいことになる。
クリーニングなんかは立って作業されとるようですが、縫製工場はというとたいていミシンの前に腰掛けとる。で、人間腰掛けると、動くのがおっくうなもんでいっぱい材料を手元に置いて、同じ作業をまとめてやろうとする。これも結果的には「大艦巨砲主義」の場合と同じことでね、そういう材料や仕掛品をいくら積んだって利益にならんどころか、金利がかさむばっかりなんだが、そんなことは誰も思っとらん。「私はこんなに仕事をしています」というような顔をして、汗かいて動いとる。
で、広い場所をとって物をためておる。物をためておけば今度は運ばんならん。物を運ぶというのは、一番つまらんことだからね。そのためにつまらん搬送機こしらえて、物運ぶというようなことをしとる。
いくら物動かしたって、付加価価などつきゃせんのだから、本当は運ばんでもええ方法を考えないかん。それに「ダンゴ」でやると、仕掛品や材料が積んであるので、後工程の作業の進み具合がよくわからん。というんで、汗かいちゃあ「後ろの作業の進み具合はどんなものか」と気を使わにゃならん。
まあそんなことで、「ダンゴ」やるというと、場所のムダ、在庫のムダ、運搬のムダということがあっちこっちにでてくる。じゃあどうすれば「ダンゴ」にならんかというと、とにかくひとつずつ作ることです。
この一個ずつ作るということが、前に話した「ジャスト・イン・タイム」ということになるんですが、そんなことを言うというと、「そんな作り方しとったら、今の単価じゃとてもできん」とか、「そんな頻繁に段取り替えしとっちゃ、生産がガタ落ちになる」というようなことを言われますが、それをどうしたらいる物がいる時にいるだけ、後工程が前工程から引き取って「ジャスト・イン・タイム」でものが作れるかということを勉強するのが、この「トヨタ方式」なんでしてね。
(物を溜めること、運ぶこと、こりゃあもう一番つまらん。ムダがムダを呼ぶだけです。 終)
後工程が前工程から一つずつ引き取って物をつくっていく。ジャストインタイムの考え方が、ようやく実践的になってきましたね。
まとめて作ると色々なムダが出てくる事例が数多く示されました。
頭の中の発想・考え方は、すべて常識とは正反対なのです。だから驚きを隠せません。
(明日もお楽しみに)
出展:伊藤良哉著・クリーン忍術心得帖パート1(ゼンドラ出版)
クリーン忍術心得帖 パート1(復刻版) (2004年06月10日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読