お客様に支持される価格決定方式…これを知れば強い武器を手にしたようなもの
外交営業の価格の決定についてはとても奥深く、単純に出品構成と単価とその平均では済まされません。
難しい話が続きましたが、今日でおしまい。じっくり勉強してください。
★価格を決める(後篇の続きです)
「おわかりですね。それではこの画面の表の上位4アイテムの構成比を見て下さい」
二人は画面に表示されている表を覗き込んだ。
そこに表示されているファイルの項目には、商品名、売上高、売上構成比、累計構成比、ランクの各項目に数字が並んでいる。
「この上位4アイテムの累計構成比の数字を見ていただけませんか」
藤川はそうは言ったものの、二人にはまだ意味が分からない。
「えっと…、上から4番目で41・7%になっています」
「そうです。この4アイテムで売上の約4割を占めていることになります」
そうか!と幸二は思った。4アイテムで売上の4割を占めるのだから、 この4アイテムの平均を求めれば商品の一点単価が分かるのではないか。そう思った幸二は藤川に言った。
「この4アイテムの単価を合計して、アイテム数の4で割った平均値で、一点単価が分かるのですね」
「いいえ。それで求められるのは商品の平均値であって、まだ一点単価ではないのです」
「???」
「中山社長のところでは、素材やデザインで付加料金を取っていますか?」
「ええ。シルクやプリーツなどは、別に取っています」
「そのシルクやプリーツといった素材別デザイン別の付加料金が売上に占める割合は、どのくらいでしょうか」
「すいません。お恥ずかしいですが、今まで計算したことがありません。」
中山社長は、ちょっと恥ずかしそうに答えた。
「いえ、大丈夫です。ほとんどのクリーニング店は、そんな計算をしたことがありませんから」
藤川は、またコンピューターを操作して別のファイルを表示した。そこには「付加料金別売上」のファイルが表示されていた。よく見ると「合計」の行が目に付く。視線を右に移していくと、「累計構成比」の項目に「10・2%」と表示されていた。
「分かった!」
それを見て、幸二が叫んだ。
「分かりましたか?」
「ええ。付加料金の売上に占める割合が、10・2%あるわけですから、さきほどの平均値にこの割合を掛合わせると、一点単価が出るのではありませんか?」
「その通りです」
藤川は嬉しそうに答える。
「付加料金が売上に占める割合は、約1割にも達するのですか?」
中山社長は、驚きながら言った。
藤川は落ち着いた口調で、
「その通りです。この付加料金は売上に対して約1割、多い所では約2割にも達します。ですから、付加料金だからと言ってバカにできません。売上の1割から2割だと、これだけで経常利益分はあるのですからね」
中山社長と幸二は感心しながら、藤川の話に聞き入っていた。
「これで一点単価の求め方は理解できたと思います。後は、この主要アイテムにそってバランスを考えながら、その他の価格を決めていけばいいのです」
「ところで、どうして一点単価から価格を決めていくのがいいのでしょうか」
幸二は藤川に尋ねた。
「現在のように厳しい消費状況では、お客様に買っていただける価格、即ち支持される価格にする必要があります。もちろんその上で利益が出る価格にしなければなりません。それには従来の原価積み上げ式で価格を決める方法よりも、この一点単価を決めてから各価格を決める方が、よりお客様に支持される価格にしやすいのです」
中山社長と幸二は、売上を客観的データとして記録し、分析することがいかに大切であるかを感じていた。
(明日もおたのしみに)
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