相手との約束の時間「9時52分」の本当の意味は?
今日はルート外交マニュアルです。後篇…外交は非効率のメカニズム。とても大切です。じっくりお読みください。
第3章 外交についての考察 (後篇)
「この時間の大切さを理解してもらった上で、外交を始めるにあたって、二つの「作る」という作業をおこなっていきます」
「二つですか?」
「そうです。二つの「作る」という作業です」
「一つはわかります。「お客様を作る」ことでしょう。でも、もう一つとは?」
「お客様間を移動する「ルートを作る」ことです」
「移動するルートですか?でもそれは、お客様ができるとお客様からお客様に移動するわけですから、自然とできるのではありませんか?」
「たしかにそれでもルートは出来るのですが、それでは効率よくお客様間を移動することはできないのです」
「どうしてですか?」
「お客様を訪問する時間ですが、これはこちらが勝手に決めるものではなく、定期外交といえどもお客様の希望する時間に、できるだけ合わせて訪問しなくてはなりません」
「留守であれば、お伺いする意味がありませんから、当然ですね」
「そうです。ましてや、こちらが訪問するまで待っていてくれるお客様は、まずいません。お客様の希望した時間、指定した時間に必ず訪問することが、外交をおこなう上で大切な「時間」の中の管理にあたるのです。しかし、何のルールも無くお客様をそれぞれ作っていくと、訪問する時間がそれぞれバラバラになって、右往左往しなければならず、結果、効率が悪くなるのです。効率が悪ければどうなりますか?」
「もちろん思ったほど売上を上げることができなくなると思います」
「ですから効率良く売上を上げたいのなら、先にルートを作ってから、そのルート上でお客様を作っていかなければならないのです」
「そうか、そういう理由だったのか」
藤川と幸二の会話を黙って聞いていた中山社長が、突然口をひらいた。
それを聞いて藤川は、ニヤリとしながら、
「分かりましたか?」
「ええ、どうしてなのか最初からちょっとひっかかっていたのです。でも、それだと我々は合格だったということですね」
「そうです」
幸二には二人が何を言っているのか、まだ理解できていない。
「幸二君、まだ気づきませんか?」
「???」
「中山社長が気づいたのは、約束の時間の意味です」
「約束の時間・・。9時52分・・。でしたね。あ!そうか!」
「そうです。何故52分といった中途半端な時間にしたかということです」
「実はここにお伺いする時に、二人で本当に中途半端な時間だなと言っていたのですよ」
「普通でしたら10時とか、10時半とか区切りのいい時間にするのですが、外交を始めたいとの相談でしたので、失礼かと思ったのですがちょっと試させてもらいました」
「すぐに相談を聞いて頂いたということは、一応テストは合格だったということですよね」
「はい。外交で重要なのは、先ほどから言っている「時間」です。それも分刻みの時間なのです」
「分刻みですか?」
「そうです。考えてもみて下さい。例えば1日に60軒のお客様を訪問しているとして、それぞれに1分間余分にかかったとしたら、最後のお客様には、59分遅れてしまうことになります。これではお客様と決めている時間を守ることはできませんね」
ようやく幸二は、外交をおこなう上で大切な「時間」の持つ意味が、理解できたように思えた。
「そこで、普通何かを「作る」作業をおこなう場合に、何が必要になりますか?」
「それは、指示書や設計図だと思います」
「その通りです。この設計図が無いと、できあがっているように見えても、実際には不具合が多く出てきて、効率が悪いものです」
「そうです」
「外交も同じなのです。でも、普通はパンフレットを作って適当に商圏を決めて、安易に外交を始めてしまいます」
「その通りです。自分もそうしようと思っていました。決して思いつきだけや見よう見真似で、おこなってはいけないのですね」
「ええ。非効率な外交を効率良くおこなっていくために、「時間」の大切さを認識する。そして、それを100%活用するためには、設計図=計画が必要になるのです」
本来非効率である外交を、効率よくおこない売上を多く上げていくには、正しい設計図である計画を作らなければいけない。
この設計図である計画が、いかに正しくできるかによって、外交の売上そのものが決まってしまうのである。
★この章のポイント
1・外交は初期投資が少なく、商圏も自由に設定できる。
2・外交は本来効率の悪い営業形態である。
効率を悪くさせている理由として、
・ 同時に二ヶ所以上の顧客を訪問できない。
・ 顧客間を移動するのに、移動時間がかかる。
3・ 非効率な外交を効率よくおこなうには、
時間の有効利用と管理が重要である。
(第3章 外交についての考察 (後篇) おわり)
明日もお楽しみに
ルート外交マニュアル〈最終完結版〉 2005/12/01 (2005年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読