お客様がお店を選ぶとてもわかりやすい条件
好きだから、気持ちいいから、究極の選択です。これに勝るものはほかにはありません。だからこれをどのように作るか、達成するかがポイントとなってくるのです。
今日は売れるクリーニングからどうぞ
〈10〉 高く売れ! 価値で売れ!
感情でお売りなさい
実質的価値の判断を言葉に換えます。
「損か得か」
「高いか安いか」
「合理か非合理か」
これらに連なる語彙(ごい)が実質的価値の尺度を表わした言葉です。人の生活、とりわけ社会生活が経済行為に深く依拠しているように、正に経済学的価値判断が実質的価値であります。
わたしたちは常に「損か得か」、「高いか安いか」、「合理か非合理か」のはざまと選択のなかで生きているといえます。くりかえせば、人は常に損か得かの選択を強いられながら生きているという事実です。ストレスはここから生まれます。
「損か得か」、「高いか安いか」は比較であり、相対評価です。相対評価とは相対する比較対象により価値が変わることを意味します。得が損になったり、安いが高いに容易に変化するのです。とりわけ技術革新のスピードは実質価値の急速な陳腐化を意味し、新製品・新商品依存症的消費行動を誘因します。人はいま実質的価値の急速な変化の前で立ちすくんでいるようです。実質的価値の多様化であり、過剰化でもあります。
さて、このような時代の背景があって、実質的価値の対極にある価値、それが感情価値(感情的体験価値)であります。プリミティブ(原始的・生来的)な感情によって判断される価値です。実質的価値の対極と表現しましたが、対立するだけではなく、むしろ実質的価値を核としてそれを抱合する価値でもあります。
「好きかキライか」
「快か不快か」
「合うか合わないか」
同じようにこれらの語彙(ごい)が感情価値(感情的体験価値)の尺度を表わした言葉です。
実質的価値に満たされたあと、成熟とか飽和と呼ばれる市場にあっては、感情価値が判断の重要な基準になります。損か得かの経済合理性の社会にあればこそ、人は「理屈抜き」に「好きかキライか」、「快か不快か」、「合うか合わないか」で意志決定し行動しがちなのです。
いまとこれからの時代にあって、人は潜在的にストレスを強く感じ、そのストレスから逃れたいと無意識に行為行動します。ありきたりの言葉ですが「癒し(いやし)」を求めているのです。ここで大切なこと。得でなく損でもいいのです。安くなく高くてもいいのです。早くなくてもスローでもいいんです。簡便でなく手まひまかかってもいいんです。
「好きだから」
「気もちいいから」
「安らぐから」
「嬉しくなるから」
「元気がでるから」
「愛らしいから」
「なごむから」
「癒されるから」
およそ経済合理性とはかけ離れた、プリミティブ(生まれながらの)な価値、それが感情価値(感情的体験価値)なのです。
「損か得か」が「好きかキライか」に変わります。「高いか安いか」が「快い(こころよい)か不快か」に分けられます。「便利か不便か」が、自分の好み、感性、ライフスタイル、趣味などに「合うか合わないか」として問われます。多分に趣味性をおびた自己中心的な絶対価値を感情価値と呼ぶこともできるでしょう。
非合理の時代をむかえています。お客様が強く求めているもの、それは理屈抜きの感情価値です。感情価値は体験経験によってスリ込まれ増幅し学習されるものです。
売れない時代でも売る、売れない時代でも売れる方法とは感情価値の具体化です。売るのは感動!小笠原のセオリーです。
(〈10〉 高く売れ! 価値で売れ! 終)
(明日もお楽しみに)
売れるクリーニング 小笠原範光の新・マーケティング論 2007/12/1 (2007年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読