ZENDORA BOOKS BLOG

とってもとってもニッチな会社!クリーニングの業界出版社・ゼンドラ株式会社より発行しております、書籍紹介のブログです。クリーニング店の皆様だけでなく、どなたでもお読みいただける内容をまとめておりますので、ぜひとも気軽に読んで楽しんでくださいね。

トヨタのもののつくりかた「自働とは止めることなり」

大野耐一氏かく語りき あと2話です

 

とても残念ですね~

もっと楽しみたいですね~

もっと勉強したいですね~

 

今日は全19話の中でも、とくに深いお話です。

コンベア生産のメリットとデメリットがしっかりわかれば、あなたも改善点が見つけられる眼を養うことができるでしょう。

何が正常で何が異常なのか、この見極めがとても大切ですね。

機械の新しい古いではなく、機械と人間作業の組み合わせの話。機械を使うのも人間ですから、機械を上手に使うのも下手に使うのも人間ですね。その上手と下手の違いがこの話で明確になる事でしょう。

それでは、大野耐一ワールド!お楽しみに♪

 

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第18話 絶えず全体の流れを考える。部分にばかり目が行くと、かえって『改悪』になったりしてね。

 

改善というとどうしても、部分の生産性ばっかりに気をとられてしまう。たとえば「段取り替えを一時間から十分に短縮しました」なんて、報告を受ける。しかしいくら段取り替えを速くしたって、そこでおんなじ物いっぱい作られちゃ、こりゃ改善どころか‥前より悪い。

 

改善というのは何のためにやるかというと、全体に大きな流れを作るためにやる。

 

どんな流れかというと、今までのまとめて作っちゃ後工程に押し込むというやり方を根本的にひっくり返して、ジャスト・イン・タイムにいるところがいる物をいるだけいる時に引き取る、そういう物の流し方に変える。

 

そうするためには、作る方も作り方をそれに合わせて変えていかねばならん。そうやって、全体の流れをいかにスムーズにするかということで、段取り替えの時間を短縮したり、少人化、あるいは多工程持ちというようなことに取り組んでもらう。

 

こういったことはどちらも平行して進めにゃならん。ところが実際には、そのような意識が欠けておるところが多いんだね。


だからこのジャスト・イン・タイムという大きな流れから外れんように改善すれば、その改善の効果というのは出るんじゃないでしょうか。

 

しかしこの流れを作れ、なんていうと「いや、うちではちゃんと流しとります」なんて言うんだね。見りゃ、コンベア使ってどんどん品物流しとる。コンベア使えば「流れ作業」だと思っとるらしいんだが、とんでもないんでね。

 

そんなのはただ「流し作業」しとるだけだ。こういうのは「できたから運んどけ」というようなもんで、前にも言った「ダンゴ生産」なんだね。

 

それとコンベアを使うまずい点というのは、不良があっても後工程に流してしまうこと。普通の自動の機械というのは、うまくいっとる時はいいが、いったん不良品を作りだすと止めるまでどんどん不良を作り続ける。ここが一番いかんのだね。

 

で、このベルトコンベアの正しい使い方というものもある。これはどういうのかというと、コンベアというのは一定のスピードで動いておる。これを利用すると、等間隔のピッチで仕事ができる。

 

じゃあコンベアのスピードはどうするかっていうと、一日にそのラインじゃ何個作らにゃいかんかと、その数字から計算してコンベアのスピードを出す。で、今度はコンベアの方に等間隔の線を入れておく。

 

この間隔というのも、その間隔の時間で物ができるようにする。そして、品物を載せるときにはその線の上に載せるようにすれば、必ず等間隔で品物が流れてくる。

 

そしてここからが大事なんだけれども、こういう使い方をするときには、このコンベアを止められるスイッチを、作業者全員のところに付けておかにゃいかん。実際には作業者の腰の位置につけておるんだけども、何でこんなスイッチ付けるかというと、ひとつには問題が起きた場合、すぐラインストップさせてその問題を解決するため。

 

もうひとつには自分が暇だからといって、他人の仕事に手を出そうとしたらすぐ分かるように、という役割がある。また、前から品物が流れてこない場合にも止める。こうしておいて、あんまりコンベアが止まるようだと、「こりゃどこかに問題があるぞ」ということが分かる。

 

話を戻して、他人の仕事に手を出すということを言いましたが、これは自分の仕事がなくなったから退屈なもんでちょっかい出す。この退屈になる理由も、本人の手が早い場合と、もともと仕事が足りないという場合があるが、どちらにしろ手があいているなら休んでもらやいい。

 

そうすりゃ監督者がそれ見ると、「今手があいとるな」と分かるんでね。それなら「応受援」してもらおうかという判断ができる。これならコンベアでもバトンタッチゾーンを作ることができるので、流し作業にはならんということです。

 

つまりコンベアの役割というのは、今の仕事が遅れているのか正常なのかどうかということを、一目で分かるようにすることにあります。大体スポーツでもトレーニングする時には、タイムキーパーというのがついて、「もっとペース上げろ」とかなんとか言って指示する。

 

それとおんなじで、コンベアをそういう風に使えば、コンベアが動いた時間、あるいは止った時間で仕事の進み具合を判断することができます。

 

というようなことで、この「止める」ということが非常に重要なことになる。つまり、問題点の発見に大きくつながるということです。豊田自働織機がそうですが、この「自動」でなくニンベンの付いた「自働」機械というのは、不良が出ると必ず止る。

 

で、それに対して何らかの対処をし、二度と不良品を作り続けんようにする。ですから「自働とは止めることなり」と言えるんではないでしょうか。

 

(第18話 絶えず全体の流れを考える。部分にばかり目が行くと、かえって『改悪』になったりしてね。 終)


さあ、次回は最後の一話です。お楽しみに。


 

出展:伊藤良哉著・クリーン忍術心得帖パート1(ゼンドラ出版


クリーン忍術心得帖 パート1(復刻版) (2004年06月10日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読