外交とコール外交の明確な違いを知らなければなりません
第2章 外交の種類
「ところで中山さん、どのような外交を始めようとお考えですか?」
「どのようなと、いいますと?」
「外交には種類があるのを知っていますか」
「え!種類があるのですか?」
幸二は驚いて聞き返した。
「今おこなわれている外交には二種類あります。おそらく中山さんや幸二君が知っているのは、定期的に集配する外交、決められた日時に定期的にお伺いする外交だと思います」
「そうですが、それが外交ではないのですか?」
「もちろんそうですが、それは定期外交と呼ばれています」
「それじゃぁ、もうひとつの外交は何ですか?」
「お客様から、今から取りに来て下さいといった依頼を受けて、その都度お伺いする外交があります」
「取りに来て下さいと連絡が入ってから訪問するのですか?」
「そうです。連絡が入ってからその都度訪問しますから、コール外交と呼んでいます」
「依頼の連絡が入ってから訪問するなんて、楽な外交ですね。その上、留守が無いので、無駄はありませんね」
幸二は、すかさず答えた。
「でも、預かりに行くときは確かに留守は無いのですが、出来あがったクリーニング品を納品しなければなりませんので、納品時の工夫はいりますし、なにより依頼が来るまで待っていなければなりません」
幸二には、このコール外交は訪問時の留守が無いので効率が良いように思えたが、よく考えてみると確かにクリーニングは預かる業務だけではない。納品もしなければならず、その時は留守の時もあるわけで、在宅を確認してお届けしなければならないこと、それ以上にあくまでも依頼を待たなければならないことを指摘されて、ある重要なことに気がついた。
「でも、クリーニングの依頼の連絡が入ることは、その前に集配をおこなうクリーニング店がそこに存在することをまず知ってもらわないといけないですね」
「そうです。いいところに気がつきましたね」
「だとすると、このコール外交は店を中心に考えて商圏を広げる、まるで飲食店の出前と同じじゃないですか」
幸二は学生時代にアルバイトをしていた飲食店を思い出していた。
このコール外交は、店の存在をまず顧客に知ってもらう必要がある。そのためには、広く宣伝活動をしなければならないが、それは別に外交に限ったものではない。店そのものの存在を知ってもらうことであれば、店自体の営業活動であって、外交自体の営業活動ではない。この外交は、主体性を持った営業活動ではなく、店の延長線上での営業活動である。
その上、連絡が入ってから訪問する事は、顧客が必要としている時だけ集配をおこなうので、それ以外は手をこまねいて待っている受身の営業形態にほかならない。外交は顧客が必要としている時はもちろん、定期的に訪問することでクリーニングをこちらから促す積極的な営業活動でなければならない。
「ということは、外交とは店と関係なく商圏が自由に決められて、活動する時間も自由で、それをおこなう人自身が店であるような主体性があって、その上こちらから積極的にクリーニングを促すようなものでないと本来の外交とはいえないのではないですか?」
「そうです。ですから定期外交が本来の外交になるのです」
★この章のポイント
- 定期外交とコール外交の相違点。定期外交は、決まった日時に定期的に訪問する。コール外交は、顧客の依頼があってその都度訪問する。
- コール外交の欠点。店を中心に考えなければならず、自由な商圏、時間を取ることが出来ない。クリーニングを促すことが出来ない。常に受身である。絶対顧客数が少ない場合、アイドル時間が多くなる。
- 定期外交の必要性。
(第2章 外交の種類 終)
明日もお楽しみに