ZENDORA BOOKS BLOG

とってもとってもニッチな会社!クリーニングの業界出版社・ゼンドラ株式会社より発行しております、書籍紹介のブログです。クリーニング店の皆様だけでなく、どなたでもお読みいただける内容をまとめておりますので、ぜひとも気軽に読んで楽しんでくださいね。

同業他社の批判・業界イメージを低下させてまでおこなう争いの先に、いったい何があるというのか?

私たちの市場、つまりパイは大きくなるのでしょうか?


大きくなることは絶対にありえません。パイは縮小していきます。なぜなら、人間の一日における繊維製品着用枚数には限界があるから。

 

一日に5枚もワイシャツを着替えることはあるまい。靴下を三足、パンツを2枚重ねて履く人もいないだろう。すなわち、私たちの需要は、人間が一日に着用する衣類の枚数×絶対人口、これが私たちのパイであるのは間違いない。

 

これを踏まえて…

さて、今回が最終話。極めて貴重な話です。

 

なぜ私たちは、パイの奪い合いばかりおこなうのか。

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そんなに安くしてどうするの? 同業他社の批判・業界イメージを低下させてまでおこなう争いの先に、いったい何があるというのか?

 

問題山積です。

 

パイは大きくならない・小さくなることを前提として…しっかりと読んでいただきたい。そしてパイの奪い合いから新しいパイの創出へ。

 

みなの視点がここに移った時、あらたな道が拓けていくであろう。もう少し時間かかりそうだが、みなの英知で、きっと拓いてくれるものと期待している。

 

 

最終話 決められた『パイ』の中で、いかに手堅く儲けるか。これが一番大事なことです。

 

最後に企業の体質ということで言うと、どんな企業でも大きくふくらんでいるうちはいいんたけども、いっぺんふくらんでそれ以上行ってから、今度はちょっとそれが減るというと大騒ぎせにゃならんという体質というか体力の企業が、日本には多いんじゃないでしょうか。

 

昔の外国のことわざで「パイは小人数で分けた方が分け前は多くなるぞ」と、五人よりは四人で分けた方が一人当りの取り分が多いぞ、というのがあったんですが、日本じゃこれを変なふうに変えてしまった。

 

昭和三十年ごろ、日本が高度経済成長で伸びておった時に、「大勢おるんなら、パイを大きくすりゃいい」なんて変なことをわざと言い出す人間がおってね。パイを大きくすりゃ分け前はたくさんもらえるんだと、つまり売上さえ増やせば会社は良くなるなんていう悪い考え方に右へならえする経営者が多くなった。

 

そのため今でも「もうパイは大きくならんぞ」と、「パイが小さくなったときはどうするんだ」と考えない経営者が、日本でも外国でもほとんどだと思います。

 

だから最近のように世界的に、需要に対して供給能力が大きくなっちゃうというと、もうパイは大きくすることができんのに、今度は同業者どうしで市場を争ったり、お互いに一所懸命やっては、結果的にどっちもあんまり儲からんということになってきた。

 

それから、今までの半分の人数で倍ぐらいできるような機械が開発されるというと、作る方はどんどん作るんだけども、消費する方はそんなにあったってしょうがないので、「安くないと買ってやらんぞ」なんていうことになる。

 

こんなことやっとっちゃ儲からんのでね。買う方はいいかもしれんが、メーカーはお金使って新鋭機買って、でき過ぎて売れないほど作り過ぎてしまう。で、お金をまわしてもらわんと困るので、半価でも売るよりしょうがない、あるいは原価切っててでも金まわりのために換金せんならん、なんてつまらんことをやっておるんです。

 

こういった点、皆さん方は同業者で、もうパイは大きくならんという前提で「トヨタ方式」を勉強されておるということに、私はある意味じゃ非常に感心しておるんです。どこの業界もこういうふうにやってくれたら、もっと皆が良くなってくれると思うんですけども。

 

一時ICなんていうのは、いくら作っても足らんので宝石と同じ値段だ、なんて言っておった。「五年や十年は心配いりません」なんていうメーカーもあったんですが、それから三年もせんうちに、今ではICもジャンジャンできるようになって、かえって値下がりしておる。というようなことから、あまり一時的なことだけにこだわってやるというのは、お互いつまらんことになるんじゃないでしょうか。

 

ですから、もうパイの大ききで狙うんではなくて、この大きさというのは決まっておるのだと考えて、じゃあその決められた大きさの中でどうやって手堅く儲けていくかということを考え実行する のが、今後大切なことではないでしょうか。

 

そういう意味でも私は、クリーニング業者の方に他の業種の先鞭をつけてもらうといいんじゃないかと思います。

 

(大野耐一氏かく語りき・おわり)

 

 

 

自分たちの首を絞めている不毛な戦いは、終わりにしなければいけない。もしくは、この不毛な戦いからいち早く抜け出し、新たなステージへ進むことを考えていきたい。

 

需要と供給のバランスはとっくに均衡を失い、オーバーストアであるのは確実だ。同業者同士の争いは熾烈を極めている。

 

また、同業者との競争すら終わつつあると考えることもできる。消費者のライフスタイル自体がクリーニングへの脅威にもなっているのだ。

 

ヤバイ!このままでは全滅だ!

 

非常識ではなく、脱常識である…こう書かれていたと思う。トヨタ方式が業界全体を救うことはないだろう。しかし、この脱常識の考え方は、クリーニング業の新たな挑戦・新たな旅には絶対に必要な考え方であるのは間違いない。

 

次世代のクリーニング業を担う10代・20代の若者には、老年・中年のオッサン全員が「お前は馬鹿か!」というような新しい「脱常識発想の手法・やり方」を考えだしてほしい。

 

この大野耐一氏の言葉が

業界の明るい未来へ寄与することを

心から望んでおります

 

 

 

出展:伊藤良哉著・クリーン忍術心得帖パート1(ゼンドラ出版


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