ZENDORA BOOKS BLOG

とってもとってもニッチな会社!クリーニングの業界出版社・ゼンドラ株式会社より発行しております、書籍紹介のブログです。クリーニング店の皆様だけでなく、どなたでもお読みいただける内容をまとめておりますので、ぜひとも気軽に読んで楽しんでくださいね。

自利利他

f:id:makotomarron:20141122231914p:plain

第17話 上手に売る人・ヘタな人

 

自利利他

 

自利利他。

お経の1節であり、ゴータマ・シッダールタ、釈迦牟尼の言葉です。紀元前五百〜四百年前、すでにしてお釈迦様が商売の本質を説きあかしています。

 

自分の「利」は他者の「利」のなかにある。他者に「利」をもたらすことが自分の「利」であると説いています。お釈迦様のおっしゃる「利」とはたんなる「もうけ」や「とく」、利益の「利」や損得の「得」ではありません。

 

本来、利とは「役にたつこと」、「都合のよいこと」、「すぐれていること」などを意味します。商(あきない)、商売の目的とする「営利」とは次のような意味になります。

 

1・お役にたつことを営(いとな)む。
2・人様に都合のよいことを営む。
3・すぐれて、他者に効用のあることを営む。

 

これが商売の原理原則です。

 

さらに正しく言葉を理解しましょう。「利益」の「益」の意味もまた「ためになること」、「役にたつこと」という意味であります。

 

言葉には魂が宿っています。文字にはたがえてはならない真理がこめられています。

 


利益
なんと念押しの効いた言葉であり文字なのでしょうか。
『お役にたってためになること』。
「都合がよくって役にたつこと』。
『効用があってためになり役にたつこと』。
カウンターのあなたにお願いします。「利益」を正しく理解してください。ゴータマ・シッダールタ、お釈迦様の教えです。ここが大切なんです。ここが重要なんです。なによりの核心なんです。

 

「利益」という言葉ほどはきちがえられ、倭小(わいしよう)化された言葉を私は知りません。肥沃で実りと恵み多き大地を、あたかも不毛の砂漠と言い表わしている思いがいたします。

 

くり返せば言葉には魂が宿り、真理がこめられています。まちがってはいけません。正しく理解し、正しくつかうことです。

 

あなたの仕事は「利益」を日々生みだすことです。上手に売る人とはなによりもまず「利益」の意味を実感できる人なのです。

 


気づき

 

カウンターのあなたには感性豊かであってもらいたいと願います。感性とは感覚、知覚、気づく心です。気がつくこと、心づくこと、ふと思いがそこにいたること。上手に売る人は気づく心にすぐれた人です。

 

衣類衣服というモノにたいしてばかりでなく、なによりお客様という人にたいして気がつき、感がつき、心がつくことです。

 

上手に売る人は「変化」を見逃さない人でもあります。季節の変化、気温の変化、天候の変化、お客様の生活シーンの変化、行動の変化、様子の変化、感情の変化、表情の変化…あげだしたらきりがありません。

 

あなたにほんの、ちょっとした気づく心さえあれれば、いくらでも上手に売れます。売る目的は利益を生みだすこと。利益とはなにか、前章で確認し合いました。お役にたってためになること、都合よくって役にたつこと、効用があってためになり役にたつこと、でしたね。

 

具体的な事例を上げます。今年は夏があったのでしょうか。十年ぶりの冷夏。多雨長雨。日照不足。関東にあっては7月、晴れた日はわずかに3日間だけでした。天候の変化であり、気温の変化です。

 

売りかたのヘタな人の、売らない・売れない言葉です。

 

「今年は涼しくって汗をかいてないからって、汗とりダブルをすすめても断わられるんです。」かなりの数のかたから、異口同音に聞く言葉です。売りかたのヘタな人、売ろうとしない人の言葉はいつでも消極的で受け身です。どうしたら「利益」、お役にたってためになるか、気づき考えようとしません。

 

あなたはちがいますね。そうです、もう気がついています。ここ数日、お客様との会話のなかでカビの話題がよくでることを。またダンスやクロゼットの衣類にカビがはえてしまったというお客様にも何人か出会っています。

 

上手に売る人とは「変化」に合せて価値をつくり分け、使い分けられる人です。上手に売る人は雨続きのこの7月8月、「汗とりダブル」を「カビとりダブル」に積極的に変えています。お客様との会話のなか、「利益」お役に立ってためになることのヒントに気づく感度をもち合せています。カビた衣服をきれいにしてさしあげる知識と知恵ももっています。

 

上手に売る人の回路はこう動きます。

 

1.気づき・発見
お客様の困っていること。悩んでいること。お役にたてること。

2.商品知識・サービス
解決方法。こうできます。こうしてあげます。こうしましよう。

3.速度・販促
教える。知らせる。伝える。心を配る。

 

上手に売る人は、上手に訊(たず)ねる人です。心を配って聞いてあげられる人でもあります。

 

「タンスやクロゼットのなか、だいじょうぶですか。この陽気でカビがはえたっていうお客様、多いんですよ。お急ぎ衣類のカビ点検してみてくださいね。」

 

無論、衣服にたいするカビの知識もありますから、お手当て方法のアドバイスを忘れることはありません。「関係」が生まれるんです。お客様とのあいだに、信頼され安心しておまかせいただける「関係」が生まれます。

 

上手に売る人とはその場その場、1回1回の口が上手くておすすめ上手な人ではありません。実(じつ)があるんです。誠実の実です。お客様という人は、この誠実の実に敏感なのです。上手な売りかたとは、常なるあなたの誠実さにちがいありません。


いま一度の「3がけ」

 

私の事務所、PDCの販売基本ノウハウが「3がけ」であります。

ヘタなんですねえ。一生懸命な人ほど、押し売り・押しつけに感じさせてしまっているです。努力し、がんばればがんばるほど、客離れをおこしているんです。もったいないんです。

 

「3がけ」とは誰にでもできる上手な売りかたのノウハウです。本連載第14章に述べたとおりですが、ポイントを再整理します。

 

1・「目がけ」

販売、売ることの前提です。お客様に興味をもってもらう、お客様の関心をひくことです。興味・関心もないのにすすめられるからお客様は不快なんです。断わることが苦痛なんです。

 

興味をもたす、関心をひくポイントは『見せること・魅せること』にあります。飲食業ですら時代はオープンキッチン、見せる演出の時代です。

 

お客様は説得されることをことのほかきらいます。お客様はご自身で納得したいんです。それにはディスプレイが実に有効です。

 

表(おもて)ディスプレイ。価値を実感・体感、触って感じていただくものです。

裏(うら)ディスプレイ。「しまった」「困った」現物を展示して、失敗の擬似体験をしていただくものです。

 

お客様との会話、対話のなかで道具としてディスプレイを活用してください。非常に効果的であり販売に直結します。

 

なによりも、なんにあっても、まずもって興味をもってもらう、関心をひくことが上手な売りかたの第一歩です。もっともっと見せなさい。売ることは魅せることなのですから。


2・「声がけ」

販売・売ることの基本です。売ることは教えることです。売ることは知らせることです。売ることは伝えることです。

 

声がけにも上手な声がけとヘタな声がけがあるようです。ここでもまた「利益」、原理原則です。原理原則にかなうことが上手なことです。お困りのことはないか、お役にたてることはないか。肝腎、声がけの肝臓と腎臓は訊ねることであり聞くことです。心配・心を配る言葉と姿勢がお客様の心に響きます。

 

さらに言えば「売るな!語れ!」であります。客観的な事実として他のお客様のお役にたって喜ばれていること。あなたやあなたの家族がやって良かった体験経験を手短に語りなさい。上手な声がけとは「共感」をよぶこと、「共鳴」していただくことにあります。

 

また、声がけにはタイミングも重要ですね。カウンターで見ていると現品現物がもちこまれたときにしか声がけしていないようです。結果としてお客様の心に負担をかけ、常にイエス・ノーを求めています。なぜワイシャツだけおもちのお客様へ、「スラックスをおだしになるときは汗とりダブルとお声がけくださいね」と声がけしないのでしょうか。どうしてワイシャツだけ引きとりのお客様に、次回ご来店のおりお役にたつことを声がけできないのでしょうか。上手な声がけとは、その場でイエス・ノーを問わない背景で、次回の伏線をはることです。印象づけることです。お客様の頭と心にすりこみ、暗示をかけることでもあります。そうです、実、誠実さを忘れずなくさずに宣伝しなさい。

 

3・「心がけ」

利益の意味を理解することにはじまり、「感謝する」、「感謝できる」心を常に育(はぐくむ)ことです。やりがいもまた、あなたの心がけがもたらしてくれる結果なのですから。

 

上手に売る人には共通点があります。笑顔がすてきなんです。笑顔がきれいなんです。いつでも笑顔なんです。その明るさ、元気よさ。あなたがただいてくれるだけで、それだけで、心がなどむんです。

 

そんなあなたは、一日一日に数字で目標をもっています。売り上げに限らず、重点コース、重点加工の販売点数。お客様からいただいく「ありがとう」の言葉の回数。それらのひとつひとつが、やったアー!やれたあ!できたあ!という達成感になり、あなたの笑顔をさらに輝かしくしているのですね。

 

心がけが姿勢です。心がけが態度です。心がけが表情です。心がけがあなたの全てです。

 

女王の道

どちらかと言えば、私はクリーニング料金を安く売る考えかた、やりかたには強く否定的な考えをもっています。料金を下げたところで中長期に数や量が増え続けることはもはやありません。結果として利益を失うだけなのです。

 

なにより安いモノ、安いサービス、安いクリーニング店はすぐ飽きられてしまいます。売りかたにはまちがいなく、上手な売りかたとヘタな売りかたがあるようです。料金を下げなくても、安売りをしなくても売れる方法を考え努力することが、商売としての本筋であり王道です。いえ、カウンターのあなたとともに歩む道ですから、王道ではなく女王の道にちがいありません。

 

(明日もお楽しみに)

 

4年ぶりとなります小笠原範光著
新刊書が発売されます!
f:id:makotomarron:20141120190203j:plain

CLV21展示会場にて先行発売
12月1日 全国発売開始です。
定価3500円(税別)