実質的価値を「使用価値」と「利用価値」に分けて考える
クリーニングとケアーの違いを体系的に表した素晴らしい内容です。これほど明確に言い切っているものは、他には類を見ません。
実質的価値をどのように区分するのか!
目からウロコが落ち、新たな視点が見えてくると思います。
それでは、今日は小笠原ワールドをお楽しみください。
〈9〉 高く売れ! 価値で売れ!
価値でお売りなさい
「価値」の構造を明らかにし、合せて「価値」の構成要素を整理します。
なにが価値であり、なぜ価値であるのか。価値感なり価値の尺度は、なにを原因として変わるのか。「販売―売ること」を「価値」を基軸として解体しさらに解剖していきます。
価値はふたつを柱とします。
「実質的価値」
「感情的体験価値」
このふたつが価値の二本柱です。各々をはっきりさせていきましょう。
「実質的価値」は「使用価値」と「利用価値」からなりたちます。
「使用価値」とは「品質」であり、CLEANとCAREに二分されます。CLEANとは基本価値であり、「不快感」の無いお渡し品の状態を意味します。
きれい(洗い・プレス・シミ)そのものであり、私どもが過去から今も言い続けている品質そのものであります。いまひとつの品質、言ってみればこれからの売れる品質がCAREです。
CARE(ケアー)とはただの、普通の、当り前のきれいをさらに「お手入れ」することであり、予防と治療という機能を付加することでもあります。商品構成の分類で加工商品の価値はここに位置づけられます。
実質価値を構成するもうひとつの価値が「利用価値」です。利用価値は利便性と表現されることが通例ですが、ここでは「利便」「機能」に分け各々を「場所」と「時間」に区分して曖昧さを排除します。クリーニング店の潜在売上はその八割を場所が決定します。
潜在顧客は近くて便利で頻度多く出むく生活動線上の「場所」によってクリーニング店を選択します。さらに「場所」を拡大解釈するなら条件や環境をも含みます。環境とは立地であり、車が止めやすい利用しやすいなどの諸条件であり、場所に包含されるものであります。
さらに「時間」、いまひとつの利用価値を生みだす「機能」です。
いまの時代にあって「時間」は「機能」として解釈されるべきです。営業時間はより長く無休化し、納期は限りなく短時間化し、あらゆる場面でのお待たせ時間はゼロを目指す。時間は限りなく機能化され、すべからくの商行為がコンビニエンス化していく時代です。
社会生活の変化と二十四時間化、昼夜・オンオフといった境目や区切りがすでにして消失した「エンドレス社会」の出現です。また時間は機能であると同時にコストでもあります。
価値の土台である「実質的価値」を「使用価値」と「利用価値」に区分し構成要素を整理しました。実質価値は経済学の価値と言えます。「損か得か、高いか安いか、合理か非合理か」が価値の判断、尺度、基準です。
(〈9〉 高く売れ! 価値で売れ! 終)
(明日もおたのしみに)
出典:小笠原範光 著・売れるクリーニング(ゼンドラ出版)
売れるクリーニング 小笠原範光の新・マーケティング論 2007/12/1 (2007年12月01日発売) | 【Fujisan.co.jp】の雑誌・定期購読